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「おん婆の家言うたら中央区の方やね、ウチも同じ方やから一緒に行かへん?」
こんな美少女に上目使いで頼まれて断れる男がいるだろうか。少なくとも俺には無理だった。
「うん、もちろん。3年も経つと町並みを変わってて迷いそうなんだ」
「ははは、相変わらず方向音痴やねんな。ウチが案内したるわ」
猫のようにクシャと笑うと夏海は俺の腕を掴んできた。女子特有の柔らかい感触と匂いに心臓が跳ね上がる。
なんか積極的だな。
昔の夏海は自信無さげでもっと暗かった記憶がある。
「夏海なんか雰囲気変わったな」
一瞬、夏海がビクっと硬直したような気がした。少しだけ違和感を感じていると、すぐに夏海が振りかえって言った。
「何言うとんねん、当たり前やんか。3年経ってるんやで」
「それもそうか」
「あらら?なんやなんや、幼馴染みが大人っぽくなってて意識しとるん?」
「ち、違っ……」
「冗談や、ははは」
悪戯っぽく笑う夏海はやはり可愛い。先ほどの違和感はきっと気のせいだと俺は自分を納得させた。
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