無明

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 つれずれ自分の家の心配事などをエッセイに綴るばかりの作文者だった私が、最近よく見受ける社会現象 あちこちに見受ける「生者の居ない家 無明の家」にフト興味を持ち、小説とまでは行かないが、エッセイで無いシリ-ズを書いてみようと思った。  もし読者を私の描写で、少しでも「ゾッとさせられたら嬉しい」など大それた事を考えた。  処が段々書いて居る内に、私の性格「現実主義・無神論者・死後の世界を信じない」が出てきて、ゾッとする処か、笑い話の様な想像物語になってしまった。  でも私はそれでも好いと思った。  自分の家の泣き事ばかりのエッセイを慨嘆的に書いて好い気になって居た私が始めて、「社会現象」に目を向けて、想像を逞しくして創作を試みた。  初めての「挑戦」なのだから、挑んだ自分を嬉しく思った。  今度は「喜怒哀楽」を盛り込んだ、88歳のバァさんの作にしては と現代人にも読んでもらえる創作を探して見ようと思った。  偶々あの元気だった長女のママ友だったのに、不意にあの世に逝かれた方の家、私が「無明の家」と名付けて、夜中潜り込んで、「魂魄となって黙ってざす」方に接して見ようと思ったお家が明け放たれ、車も2台、洗濯物などがはためく様になった。  3人の子孫の内息子さんが家族ぐるみ住まわれる事になったらしい。  これであの友達のご夫婦の魂魄は、晴れ晴れとあちらの世界に羽ばたかれた事だろうと思った。  私達夫婦は88歳と90歳、些か体力の衰えはある物の、まだまだ死ぬ気は無いし、何か役に立つ事に挑もうと野心満々である。  いずれは若い者と別れを告げる時が来るだろうが、それまでは浮世の「損得」に笑ったり怒ったりがっかりしたり、日々元気に過ごそうと思って居る。  いずれ「カルシュウム」になって整理されたら、私達の家は「無明の家」などにせず、作り替えて誰かが賑やかに住んでくれ と願って居る。
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