逃げてきた男

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このままヨットサークルを続けていれば1年遅れではあるが、それなりに充実した大学生活が送れたであろう。 しかし、次の合宿をキャンセルし、私はヨットサークルへ行かなくなったのである。 最初は意気込んで始めるのだが、全て3日坊主で終わってしまう。ヨットサークルの仲間は皆いい人ばかりで人間関係で問題はなかったはずここにいたって私は大学内で完全に孤立していた。精神的にはドロップアウトした状態といってもいいだろう。 一流大学に入れ、入れと言われ続け、将来のことなどこれぽっちも考えずに、ただ偏差値の高いと言う理由だけで選んだ大学。一流大学に入ることだけが人生の目的となり、その先のことなど全く考えてこなかった私。 馬車馬のように勉強し、入った大学はどうだったのか。 世間的な評価は高い大学だろうが、私には人が多すぎて、都会の雑踏のような所で、正直、幻滅した。他のものを犠牲にしてまで貴重な青春時代を勉強にささげ、ようやく入った先に待っていたのがこれだったとは。私の身の丈に合わない大学だったのだと思う。 私は大学で何をやりたかったのだろうか? おそらく、私のゴールは大学合格であって、そこから先が描けなかったことが、このような糸の切れた凧のような大学生活を送らざるを得なくなった最大の理由であろう。 バランス感覚が極端に悪いのも私の特徴だ。勉強以外のことを器用に続けることができない人間なのだ。 サークル活動だって、大部分の学生は普通に続けているはずだ。いや楽しんでいるはずなのだ。なぜ、私は続けられないのだろうか。なぜ苦痛になってしまうのだろうか。 ここに私という人間の根本的な欠陥が横たわっている。 その欠陥は努力によって修復できないのだろうか。 あるいは生まれついた遺伝子で修復不可能なものなのだろうか。 それともメンタル面で病気を発病してしまったのだろうか?
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