来生夏樹

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突然、 「鈴音、そこどけっ!」 怒鳴られて身をすくませたとたん、鈴音のすぐ脇に、  ――ドン!―― 秋哉が背中を押し付けられた。 夏樹に両肩を掴まれて壁際に押さえつけられている。 「へっ!」 思わずびっくり眼で見つめる鈴音の目と鼻の先で、 「こういうのは、ちょっと強引なくらいがいいんだよ」 夏樹が色っぽい目付きをして、秋哉の方に顔を近づけていく。 ちょっとこれは、まさかの兄弟間のキス! 「――ええーっ!」 「ひぇーっ!」 鈴音と秋哉が同時に素っ頓狂な悲鳴をあげれば、 「グホッ!」 秋哉がいきなり咳き込んだ。 ズルリと腰を落とす。 見れば、 「――ゲホッ。ナツキよくもやりやがったな」 夏樹が秋哉の腹に膝蹴りを食らわせていた。 「ばーか、油断してるからだ。金的じゃなかっただけ有難いと思え」 夏樹はまったく容赦のない言葉を浴びせる。 そしてついでのように、  ――ビシッ―― 鈴音のおでこにデコピンした。 「痛った―っ」 再び頭を押さえて涙目になる鈴音に、夏樹はボソリと言う。 「お前も、目ぇなんか閉じてんじゃねーよ」 すると、 「鈴ちゃんに乱暴なことしないでよ、夏兄」 むっとした顔をした冬依が姿を現した。
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