来生秋哉

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来生秋哉

――ドン!―― 秋哉の手のひらが鈴音の顔の横の壁につかれる。 それに伴って、至近距離30センチに迫った鈴音の頬が、 ぴくぴく、ぴくぴく と動いた。 「……おい」 鈴音の目の前にいる秋哉が唸り声のような低い声を出すが、しかし鈴音は返事をすることも出来ない。 それは、 「おいスズネ。テメー、笑ってんじゃねーよっ!」 たまらず声を荒げる秋哉に、 「――だって」 鈴音の目がカマボコのように曲がる。 「文化祭の劇の練習だからって付き合ってるのに、秋哉くんの顔、真っ赤なんだもん」 それでも必死で笑いをこらえる涙目で鈴音は指摘する。 「それに――」 顔の横につかれた秋哉の腕を指差した。 「最初の勢いは良いけど、そのあと、指立ってる。指立っちゃってるよ秋哉くん」 ついに、ブーッと我慢できずに、口を押さえて吹き出してしまう。
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