来生夏樹

1/3
109人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ

来生夏樹

「へえ、秋の芝居の練習かよ。おもしろそーじゃん」 おとなしく寝ていればいいのに、トラブルは引っ掻き回さずにはいられない次男の夏樹が、うれしそうに部屋から出てくる。 今まで寝ていたからか、上半身裸だ。 来生家の次男と三男は、自室では服を着る習慣がないらしい。 この環境に少しは慣れてきたとはいえ、やっぱり鈴音は目のやり場に困り、床をみつめるしかなくなってしまう。 すると、 「で、秋は上手くやれたわけ?」 鈴音が目をそらした隙に夏樹はおもむろに近づいて、鈴音の体の脇に両手をついた。 「――こんな風に迫ればいいのか?」 鈴音を壁際に囲ったつもりらしいが、夏樹の方が大きすぎて、鈴音に覆いかぶさるような体勢になる。 鈴音の顔が夏樹の影で遮られた。 夏樹は、何も着ていない。 裸のままだ。 至近距離の夏樹のフェロモンむんむんな裸体は、ちょっと目眩を起こしそうな迫力で、 「……あの、夏樹……」 「ん?」 「お願いだから、もちょっと離れて……」 鈴音がなんとか言うと、夏樹はニィッと唇の端をあげて笑う。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!