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来生冬依
またややこしいのが出てきたと秋哉は額に手を当てて眉をひそめる。
夏樹だってかなり危ない性格だが、冬依はもっとマズイのだ。
今も、
「鈴ちゃん大丈夫? 怪我なんかしていない?」
一足飛びに鈴音に駆け寄って、顔を覗き込まんばかりの勢いで鈴音に迫っている。
「うん、冬依くんありがとう。大丈夫だよ」
それでもって鈴音がヤバイ。
なぜか今だに、冬依のことを子どもだと思い込んでいて、ニブイ上にちょろいのだ。
警戒することなしに、その腕の中に引き入れる。
「本当に大丈夫よ。冬依くんは優しいね」
鈴音が言えば、冬依は大きな瞳を目一杯見開いて、
「だって心配だよ。兄さんたちみんなケダモノだから」
散々な言われようだが、
「ケダモノだなんて、他の人より少し乱暴なだけだよ」
鈴音の認識がソレって、
……悲しい。
秋哉が少しシュンとしていると、
「冬依くんこそ、私のために泣かないで」
鈴音はそんなことを言いながら、心配そうに腰をかがめて冬依の顔を覗き込んだ。
でも秋哉も夏樹も知っている。
あれは冬依が目を見開いたから、瞳が渇いただけ。
最近身につけた冬依の新技。
『美少年の泣き顔』だ。
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