1 レッドドラゴン

4/7
182人が本棚に入れています
本棚に追加
/168ページ
「冬依、転ぶなよ」 こんな時でも末弟の心配を忘れない春一に声をかけられて、冬依は階段途中で振り返るとニコーッと笑った。 それこそ天使が舞い降りたような可愛らしい笑顔で、周囲は一斉にホウッとため息をつく。 「鈴ちゃん、僕と一緒に乗ろう」 手を差し伸べられて、鈴音はついその手を握ってしまう。 そのまま階段を引っ張り上げられて、春一ひとりがその場に置いていかれ、弟の早業にちょっと唖然。 夏樹はすでに秋哉と一緒にコースターの先頭に座っていて、 「おい秋、ちょこれシートベルト腰だけなのか? 上からガードが降りてくるとかねーのか」 顔を青くしながら秋哉に突っかかっていた。 意外なことに、夏樹はジェットコースターがあまり得意ではないらしい。 悲鳴をあげたりはしないが、妙におちつきがない。 だからアクセサリーをいっぱい付けて、ジェットコースターに乗れない理由にしようとしたんじゃないかと思ったら、夏樹の派手な格好にポンと納得がいった。 デートでもないのに、今日の夏樹のスタイルはえらく気合が入っているなあと、鈴音は呑気に感心していたのだ。 それにしても、いつも余裕で怖いものなしの夏樹にしては、意外な一面だ。
/168ページ

最初のコメントを投稿しよう!