1 レッドドラゴン

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「おっかしーナツキ、変な顔―っ」 『レッドドラゴン』から降りた場所にはカウンターがあって、コースター乗車中の写真が販売されていた。 先頭に座った秋哉は満面の笑みで両腕を高くあげている。 冬依はちゃっかりカメラ目線でピースサイン。 夏樹はといえば、前の安全バーにしっかり捕まって見事な真顔だった。 多分、写真で醜態を残すわけにはいかないと考えたのだろうが、みんな笑っている中での真顔は妙に浮いている。 まあ相変わらずのイケメンではあるが。 鈴音は残念なことに大口あけて何やら叫んでいた。 顔はもうどうしようもないが、それより風に煽られて覗く鈴音の二の腕の方が問題で、めっちゃ『太く』見える。 「うっわーっ」 鈴音は思わず目を覆うほど落ち込んでしまった。 隣に座ったのが華奢で色白な冬依だったから、それはもう残念なくらい太ましい(太い+たくましいの造語)鈴音の二の腕が、ばっちりと写真にうつっていたのだ。 「……ちょっとアレは」 事実を認めるのは、けっこう辛い。 そして春一は、 「すっげー、仏壇みてー」 「秋兄、それを言うなら大仏」 するどく冬依の突っ込みが入るが、秋哉が言いたかったように、ものすごい仏頂面をしている。 なんだろう、まるで政治ニュースでも見ているような難しい顔だ。 「春さん、もしかしてこういう場所キライ?」 鈴音が見上げて聞けば、 「いいや、どんな顔してるかなんて、自分じゃわからないだろ」 春一はいつもの穏やかな笑顔で鈴音に言うし、まあ自分も予期しない二の腕ショックがあったので、そそくさとその場を離れることにする。 夏樹だけが、 『まあ春のノーマルな顔はあんなだよな』 と、春一の普段の表情はアレだということを再認識している。 春一が一番素顔をみせるのは自分なのだと自負して、ふふんと自慢げに鼻を鳴らしていた。
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