2 ウォーターショット

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ウォーターショットは夏だからだろうか。 急流すべりと呼ぶにはあまりに派手な水しぶきが、ライドが落ちる場所で激しく爆発するようにあがっている。 それが名物らしいが、もちろん全身がぐしょ濡れになるのでポンチョが一枚100円で販売中。 しかし秋哉は、 「いらねーよ。水浸しになるのがウォーターショットだろ」 そういうクルーは秋哉の他にも何人かいて、 「スズネもカッパなんか着るなよ、めんどくせー」 秋哉に勧められて鈴音はちょっと考える仕草をする。 『本気か鈴音』 春一はかなり慌てた。 「いや止めとこう鈴音。ほら女性はみんなポンチョだし」 らしくもなく『みんな説』を引っ張り出して説得するのは、あれだけ濡れれば、鈴音が着ている薄手のカットソーなんか、ぺったりと張り付いて、体の線があらわになってしまうからだ。 それがどんなに他の男に見せたくない姿かなんて、鈴音には想像出来ないのだろうか。 純粋というか無頓着というか。 「スズネなんか胸ないから、濡れたってそうそう目立たねーよ」 それは事実だが、無神経すぎるぞ秋哉。 でも秋哉の失言のお陰で、鈴音はちゃんとポンチョを購入して、春一を安心させてくれた。
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