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ピンポン、パンポーン
「ご来場の皆さまに迷子のお願いを申し上げます。小学2年生の女の子、三井アヤミちゃんを探しております。園内におひとりでいるお子さまを見かけましたら、お近くの係員までお知らせください。繰り返します――」
鈴音はその放送を、頭の隅でぼんやりと聞きながら、
「……観覧車は諦める」
ガクリとうなだれた。
その一言を、
「賢明な判断だよ鈴ちゃん」
冬依だけが褒めてくれる。
だったら、
「遊園地の定番、お化け屋敷に行こうよ鈴ちゃん」
冬依が手を挙げて提案した。
「……」
鈴音は思わず返事に困る。
「あれ? 鈴ちゃん。もしかしてお化け屋敷ってニガテ?」
ニッコリ天使の微笑みを浮かべる冬依に、
「に、苦手ってほどじゃないけど……」
ライド式のお化け屋敷ならわりかし平気なのだ。
目をつぶっていても、勝手にゴールまで連れていってくれる。
だけど歩く方はダメだ。
ただでさえ方向音痴の気がある鈴音は、あの暗闇の中、まともにゴールできた試しがない。
そしてアイランドパークのお化け屋敷は、歩くタイプだった。
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