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「あーったま痛てー」
かきこむようにかき氷をたいらげた秋哉が、むしろ楽しそうに叫ぶ。
鈴音のカップにはまだ半分以上、氷が残っている。
シャクシャクシャクとスプーンで崩したら、あっという間に、赤い水が増えた。
すると、
「鈴ちゃん鈴ちゃん、見てよ」
冬依が無邪気に話しかけてきて、ペロリと舌を出して見せる。
「すごい真っ青よ」
「鈴ちゃんのも見せて」
言われて、何の気なしに鈴音も顎を突きだし舌を出して見せると、
「ん」
多分、シロップで真っ赤に染まっているだろう。
ところが、急に冬依が頬を赤らめた。
「?」
鈴音が舌をしまい忘れた猫みたいに首を傾げれば、
「そんな顔して。キスされても文句は言えねーぞ」
夏樹がゴインと、鈴音の頭のてっぺんにゲンコツを落とす。
「痛ったー、何バカなこと言ってんの夏樹」
お陰でガブッと舌を噛んでしまう。
痛む舌を堪えて怒鳴ろうとすると、いつもこういう時には庇ってくれる春一が何も言わない。
冬依はふいと目を逸らすし、秋哉はわれ関せずだし、どうやら鈴音の味方はどこにもいないようだ。
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