4 バーガーショップとカフェテリア

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けれどもそんな状況でも驚いているのは鈴音だけで、 「いっただきまーす!」 秋哉は元気にスプーンを握る。 目の前にカツカレーとビーフカレーのふた皿を置き、カレーの上にフライドチキンまで乗っけて、豪快に食べ始める。 フライドチキンが乗ったカツカレーやビーフカレー、果たしてカツやビーフと言ってもいいのだろうか。 冬依も、 「いただきます」 きちんと手を合わせて行儀よく言うが、ハンバーグカレーとミートスパゲッティの皿を守備範囲に置いている。 皿の上には山盛りのソーセージ。 「やっぱこーいうところのはレトルトだよな」 偉そうに文句を言う夏樹の前にはビーフシチュー、そしてナゲット。 見ているだけで、鈴音のお腹はいっぱいになりそうだ。 春一はと見れば、ピラフの一皿だけにスプーンを使っている。 やっと『普通の量』で鈴音はちょっとホッとした。 思わず、 「みんなすごい食欲ですね」 小声で問えば、 「こういうところに来ると、子どもは食いたがるもんだろう」 まるでお父さんみたいな答えが返ってくる。 「あはぁー」 ため息とも愛想笑いともつかない声を出す鈴音に、春一は、 「まだハンバーガーもある。ゆっくり食えばいいさ」  ……そうだった。
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