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でも、目の前の料理の山を次々とたいらげていく、豪快で元気な秋哉や冬依を見ていると、鈴音もなんだか幸せな気分になってきた。
絶対ムリだと思えた食事の皿を、綺麗にしかもおいしそうに、片端から空にしていく。
そんな弟たちの姿は、頼もしいというか微笑ましいというか。
普段から面倒見のいい春一は、いつもこんな気持ちで、弟たちのことを見ているのかもしれない。
つい春一の気持ちに同調して、
「家に子どもがいるって、こんな感じかなぁ」
呟けば、
「え?」
「……え」
驚いた顔でこちらを見る春一。
バチリと目が合う。
「えっと」
「……」
ふたりして顔を赤くしてうつむいてしまう。
春一と鈴音。
婚約こそ相調ったが、春一とそういう関係を結んだのは、実はまだ一回きりという体たらく。
やはり弟たちと同居しているマンションでは、いろいろとタイミングが難しいからだが、要はヘタレなのだ。
そんな春一と鈴音の間で、子どもの話題などちょっと早すぎる。
「いえ、あの、私には兄弟がいないので、なんかいいなぁと思いまして」
「うん。まあもうみんな、鈴音の弟みたいなもんだし」
「……」
傍から聞いていても、実にアホらしい、こっちが恥ずかしくなるバカップルな会話だ。
隣にいるのに、すっかり存在を無視されている夏樹は、
『やってらんねー』
嫌気がさして、深いため息をつく。
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