4 バーガーショップとカフェテリア

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ピンポン、パンポーン またお知らせのチャイムがなった。 鈴音は慌てて話題を変えようと、 「あ、コレ」 何もない上空を指さす。 「ん?」 春一だけが、丁寧に顔をあげて返事をしてくれた。 「お客さまに迷子のお願いを申し上げます。小学2年生の女の子、三井アヤミちゃんを探しています」 鈴音はアナウンスに耳を傾けて、 「今日、ずーっとコレ鳴ってますよね。お母さん、心配だろうなぁって思って」 恥ずかしいのを誤魔化してヘラッと笑うと、春一も涼しげな眼差しを優しく細めてくれる。 迷子アナウンスは続く。 「三井アヤミちゃんは青いTシャツ、茶色い半ズボン姿で、長い髪をふたつにくくっています。お近くで姿を見かけましたら、どうぞ係員までお知らせください」 「……」 新しい情報に鈴音はちょっと首を傾げた。 春一もそんな鈴音の様子に気が付いて、 「どうした鈴音、心当たりでもあるのか?」 心配そうに聞いてくれる。 鈴音はでも、 「え? あイエ、何でもないです」 急いで頭を振る。 今アナウンスされた格好の子どもが、少しだけ鈴音の頼りない記憶に引っかかったのだが、でもあの子には連れがいたはずだ。 ひとりで園内を歩いていたわけではない。 「鈴音?」 春一に再び怪訝に尋ねられて、鈴音はハッと我に返る。 「いえ、本当に大丈夫です。多分私の思い過ごし――」
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