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5 総合案内所
鈴音と夏樹の話を聞いて、春一は少しの間、目を閉じ腕を組んで考えていた。
でもやがて、
「よし」
頭をあげる。
そして、
「秋哉、冬依」
食事に夢中になっている弟たちの名前を呼んで、注意を集めた。
驚いたことにふたりは、カフェテリアの料理をおおかた食べ終えてしまっている。
大量の料理を食べ切れるかどうか心配していた鈴音は、いらぬお節介だったようだ。
「ちょっと気になることがあるんだ。全員に協力してもらいたい」
春一が言ったのはそれだけだったのに、
「お、出番か? 何すればいい?」
秋哉は箸を止めて身を乗り出すし、冬依は行儀よく膝の上に手を乗せて背筋を伸ばす。
夏樹もまっすぐに春一を見つめている。
全員、理由も聞かずにただ春一の命令を待っている。
春一は、クルリとこちらを向いて、
「夏樹と鈴音は、とにかく例のふたりを探してくれ。見つけたら携帯に連絡。頼む」
短く言った。
「わかった」
夏樹は答えて、まだ残っているビーフシチューの皿をそのままに椅子を鳴らす。
「行くぞ」
鈴音の腕を掴んで引っ張るので、鈴音も慌てて立ち上がった。
「夏樹」
もう一度春一に呼ばれて、夏樹が振り返れば、
「鈴音のことを頼むぞ」
春一に真剣な目で念を押されて、夏樹は、
「ラジャ」
ふざけた調子で敬礼してみせる。
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