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「ナツキ、これ持ってけよ」
秋哉がハンバーガーの入った袋からふたつを取り出して投げてくれる。
夏樹は器用に受け止めたが、鈴音は落とすまいとお手玉になった。
「なーにやってんの。どんくせーな」
憎まれ口を叩く夏樹に置いて行かれないように、鈴音も必死で後を追いかける。
長い足を回してさっさと歩いていく夏樹に小走りで追いつき、鈴音は夏樹の顔を見上げて尋ねる。
「ね、どうなってるの? あの子ってやっぱり放送の子なのかな?」
すると夏樹は驚いたことに、
「知らねー。作戦が決まったら春から連絡あるだろ」
あっけらかんと答える。
「え? 理由も、あの子を見つけてもどうするのかわかんないのに、夏樹ってば動いてるの? なんだかすっごい意外。私、夏樹は自分が納得しなきゃ、絶対動かない人だと思ってた」
鈴音が言うと、
「あー」
夏樹は背の高さを活かして、キョロキョロと辺りを見回しながら鈴音に教える。
「まあ相手が春だからな。春は間違ったことは言わねーし」
「……へぇー」
鈴音はなんだかうれしくなった。
こんな風に夏樹から春一への強い信頼を見せられると、改めて来生家の家長の存在の大きさを実感できる。
普段は個性豊かでバラバラに見える兄弟だけれど、本当にこの弟たちは春一のことを尊敬しているのだ。
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