5 総合案内所

2/11
前へ
/168ページ
次へ
「ナツキ、これ持ってけよ」 秋哉がハンバーガーの入った袋からふたつを取り出して投げてくれる。 夏樹は器用に受け止めたが、鈴音は落とすまいとお手玉になった。 「なーにやってんの。どんくせーな」 憎まれ口を叩く夏樹に置いて行かれないように、鈴音も必死で後を追いかける。 長い足を回してさっさと歩いていく夏樹に小走りで追いつき、鈴音は夏樹の顔を見上げて尋ねる。 「ね、どうなってるの? あの子ってやっぱり放送の子なのかな?」 すると夏樹は驚いたことに、 「知らねー。作戦が決まったら春から連絡あるだろ」 あっけらかんと答える。 「え? 理由も、あの子を見つけてもどうするのかわかんないのに、夏樹ってば動いてるの? なんだかすっごい意外。私、夏樹は自分が納得しなきゃ、絶対動かない人だと思ってた」 鈴音が言うと、 「あー」 夏樹は背の高さを活かして、キョロキョロと辺りを見回しながら鈴音に教える。 「まあ相手が春だからな。春は間違ったことは言わねーし」 「……へぇー」 鈴音はなんだかうれしくなった。 こんな風に夏樹から春一への強い信頼を見せられると、改めて来生家の家長の存在の大きさを実感できる。 普段は個性豊かでバラバラに見える兄弟だけれど、本当にこの弟たちは春一のことを尊敬しているのだ。
/168ページ

最初のコメントを投稿しよう!

179人が本棚に入れています
本棚に追加