179人が本棚に入れています
本棚に追加
「んな嬉しそうな顔したって、別にお前を褒めてるわけじゃねーぞ」
どうしても頬が緩んでくる鈴音に、夏樹は手に持ったハンバーガーをもてあそびながら、嫌そうな顔をしてくぎを刺す。
「わかってるわよ、そんなこと」
鈴音も、尊敬する春一と、同じ地位に立たされても困る。
それより、
「夏樹ってば、もしかして春さんと合わないんじゃないかと思ってたからさ」
鈴音は言った。
それに春一が、
「夏樹は俺のことが嫌いなんだろうか」
と真剣に悩んでいるのを知っているからだ。
そしてそんな夏樹に失望されないように、来生家の家長たらんと不断の努力を怠らないことも。
そんな春一に、今日の夏樹のセリフを教えれば、きっと喜ぶだろう。
でも夏樹は、
「んなしょーもねーこと考えてねーで、お前も探せよ」
鈴音の頭の上にハンバーガーを乗っける。
「女の子でも連れの方の男でも。そのふたりの顔知ってるの、俺たちだけなんだからな」
鈴音はハンバーガーを落とさないよう、両手で支えながら、
「うん」
慌てて気を取り直した。
最初のコメントを投稿しよう!