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その時、春一が持っている携帯のラインが動いた。
『家族』のグループに夏樹のアイコンがあがってくる。
『見つけた。芝生広場』
『了解、合流する』
間を置かず秋哉の返信。
春一は急いでアイランドパークの地図を広げ、芝生広場の場所を確認した。
パークの東ゲート側だ。
秋哉や冬依がいるカフェレストランからは一直線だが、春一がいるメインゲートからは、屋内型のゲームセンターの建物を越え、ジェットコースターの下をふたつくぐり、観覧車の脇を抜けなくてはならない。
そして東ゲートは駐車場に面している。
自家用車でこのアイランドリゾートを訪れた者が利用する出入り口なのだ。
春一は、とっくに決断した考えに則って、弟たちに舵取りを示す。
『写真を』
すぐに夏樹から、遠目で横向きだが、女の子の写真が送られてきた。
春一たちが昼食をとったのと同じような、パラソル付きのガーデンチェアに、足をぶらぶらさせて浅く腰掛けている。
青いTシャツ、茶色い半ズボン姿。
園内放送の通りの恰好だが、頭には目深にキャップをかぶっている。
そして向かいの席に座るのは、若い男。
その写真を、春一はインフォメーションの女性に見せた。
「うちの連れが、この女の子を見つけたんです」
スマホの画面を見て、女性は首を傾げる。
「女の子?」
女の子はキャップの中に長い髪を隠していると鈴音は言った。
そこが春一が引っかかった理由なのだが、やはりインフォメーションの女性には、写真の子が女の子だとピンとこないらしい。
保護者に顔を確認してもらう必要がある。
『もうしばらく、時間をかせいでくれ』
指示を送りながらも、歯を食いしばる。
すぐにでも弟たちの元に駆けつけられないのが、悔しい。
『現場の夏樹の判断に任せる』
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