5 総合案内所

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『夏樹の判断に任せる』 と春一の下知を受け、夏樹は鈴音の頭越しに女の子と男の様子を探る。 ふたりは出入り口の東ゲートから、数歩のところにあるガーデンチェアに座っていた。 ここは芝生広場なので身を隠せるような場所はどこにもない。 だけど一番近くのジェットコースターの横まで戻れば、対象からは距離が開きすぎる。 ゲートを出て行かれてしまえば、車に乗られて見失う可能性が高い。 だから夏樹は、 「鈴音、いま俺たちはデート中だからな」 芝生に足を踏み入れる前、鈴音の頭に小声で言った。 「えっ?」 驚く鈴音に、 「バカ、こっち見んじゃねぇ。カップル偽装が一番怪しまれねぇんだよ。自然に動け、自然に」 対象から適度な距離を保って、同じようにガーデンチェアに座る。 夏樹が対象の方を向いて、鈴音には背中を向けさせた。 「鈴音は俺の壁だ」 そう言って鈴音の写真を撮る想定で、女の子の姿をズームしてシャッターをきったのだが、 本当は怪しい男の視界に、わずかでも鈴音を見せることがイヤだった。 鈴音を危険に巻き込む可能性など、砂粒ほどもあってはならない。 それこそ鈴音を任せてくれた春一を裏切ることになる。 「ぜってー振り返るなよ」 夏樹に言われて、鈴音も固い表情でうなずく。 でも夏樹がしている心配を、鈴音はこれっぽっちも自覚していない。
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