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目の前、ほんの数センチのところに鈴音の胸がある。
脇があがって、まったく無防備な態勢だ。
夏樹の頭に、そっと鈴音の顎が乗せられた。
「……」
夏樹はそんなことで動揺したりはしないが、それでもちょっと聞きたくなった。
「……鈴音、お前、何やってんの?」
すると夏樹の髪を掴む鈴音の手にギュッと力が入る。
「だって、夏樹がラインしてるの見られたら、怪しまれるんじゃないかと思って」
「……ふうん」
『夏兄、鈴ちゃんにくっつきすぎ。離れて』
今まで黙っていた冬依から、いきなりカキコミが飛んでくる。
少し目をあげれば、うつむいた鈴音のカットソーから、そう豊かでもない胸元が覗いている。
夏樹のこめかみのところには、柔らかい二の腕が当たっているし、なかなか悪くない状況だ。
でも、冬依から送られてきたライン、
『離れて、離れて、離れて』
これ春も見てるんだよなー、と思うと、今頃歯ぎしりしている春一の顔が頭に浮かんで、少し笑いたくなった。
『だからナメんなって忠告したんだ』
「鈴音」
呼べば、
「はいっ!」
裏返った声で鈴音が応え、夏樹の頭から顎を外した。
目をあげて顔を見れば、鈴音の頬は真っ赤だ。
夏樹はテーブルに手のひらをついて少し腰を浮かせ、おもむろに立ち上がって、鈴音の唇にキスをした。
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