5 総合案内所

9/11
前へ
/168ページ
次へ
目の前、ほんの数センチのところに鈴音の胸がある。 脇があがって、まったく無防備な態勢だ。 夏樹の頭に、そっと鈴音の顎が乗せられた。 「……」 夏樹はそんなことで動揺したりはしないが、それでもちょっと聞きたくなった。 「……鈴音、お前、何やってんの?」 すると夏樹の髪を掴む鈴音の手にギュッと力が入る。 「だって、夏樹がラインしてるの見られたら、怪しまれるんじゃないかと思って」 「……ふうん」 『夏兄、鈴ちゃんにくっつきすぎ。離れて』 今まで黙っていた冬依から、いきなりカキコミが飛んでくる。 少し目をあげれば、うつむいた鈴音のカットソーから、そう豊かでもない胸元が覗いている。 夏樹のこめかみのところには、柔らかい二の腕が当たっているし、なかなか悪くない状況だ。 でも、冬依から送られてきたライン、 『離れて、離れて、離れて』 これ春も見てるんだよなー、と思うと、今頃歯ぎしりしている春一の顔が頭に浮かんで、少し笑いたくなった。 『だからナメんなって忠告したんだ』 「鈴音」 呼べば、 「はいっ!」 裏返った声で鈴音が応え、夏樹の頭から顎を外した。 目をあげて顔を見れば、鈴音の頬は真っ赤だ。 夏樹はテーブルに手のひらをついて少し腰を浮かせ、おもむろに立ち上がって、鈴音の唇にキスをした。
/168ページ

最初のコメントを投稿しよう!

179人が本棚に入れています
本棚に追加