5 総合案内所

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鈴音は目を見開いたまま固まっている。 驚いたというより、何が起こったのか、よくわかっていない顔だ。 そのポカンとしたツラは、水風船が顔に当たったガキみたいで、 表面に騙されて、人を信じるのもいい加減にすればいいと夏樹は皮肉に唇を歪める。 それでも徐々に思考が復活したのだろう。 「夏っ……」 鈴音が悲鳴のような声をあげかけたところで、 「もう帰りたい!」 対象の女の子の方が大声をあげた。 「!」 「!」 夏樹の体は一気に緊張する。 鈴音もそっと椅子に腰をおろした。 でもテーブルの上に乗せられている鈴音の手は、固く拳に握られている。 夏樹はそれを見ないフリして、対象のふたりの会話に耳をかたむける。 「もう、ママんとこ帰るよ!」 女の子は泣きそうな声だ。 ただごとではない様子だが、男がまあまあと宥める仕草をすれば、それ以上の声は聞こえなくなった。 女の子もうなだれるように俯いてしまい、顔は見えない。 テーブルの上に乗っていたジュースを手に取ってストローを咥えた。 風向きの方角が悪いのか、ふたりが何を話しているのか、まったく聞こえてこない。 耳をすますが、ダメだ。 今の状況がわからない。 もう少し近づくか?  いや不自然だし、夏樹の側には鈴音もいる。
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