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6 芝生広場
どうすべきか悩んでいると、テーブルに置いた夏樹の携帯、ラインの画面が上がった。
『冬依が行く』
春一からだ。
すると冬依が、まったく他人のような顔をして、夏樹と鈴音のテーブルの脇を歩いていく。
「……」
秋哉から状況を説明するラインの文字が送られてくる。
『トーイがハルと電話で打ち合わせた』
『トーイはあいつからイヤな感じがするって言う』
嫌な感じ?
確かに冬依は兄弟の中で一番人を見る目がある。
感受性が強く勘がするどいから、冬依が抱いた第一印象はだいたい当たるのだが、でも、
『トーイが男の注意を引いて、一旦女の子から引き離す』
この決断は早急じゃないのか。
第一、 春一は現場を見ていない。
男の顔も見ていない。
けれどすでに作戦に入っている冬依は、男の側まで歩いていき、その椅子の後ろのところで見事にすっ転んでみせる。
『ナツキはトーイを。オレは女の子の方』
秋哉からは間断なく行動指示が送られてくる。
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