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4 バーガーショップとカフェテリア
アイランドパークのかき氷は特大だった。
紙カップに山盛り、鈴音の顔の大きさほどある。
せっかく5つ買うのだからと別々のシロップを注文したのだが、赤青黄色、白茶色、とカラフルなことこの上ない。
鈴音は無難にイチゴ、夏樹はレモン。
秋哉がコーラ味で冬依はハワイアンブルーだ。
で、
「……」
春一の前に置かれたかき氷は真っ白。
ただの氷に見える。
「夏兄、いただきまーす」
「うお、コーラ味うめぇ!」
夏樹に何も言うなと釘を刺されて、鈴音は春一のことが気になりつつも、ストローの先のスプーンでかき氷を口に運ぶ。
冷たくてとても美味しい。
夏樹は自分のかき氷には手を付けず、何故か口元だけの笑みを浮かべて春一を見ている。
やがて春一は覚悟を決めたようにカップを口に寄せると、ガブリと氷に噛みついた。
そして驚いたように目を見張る。
「味なしだと思っただろ」
夏樹が企みが果たされた満足感にクスクスと笑いながら、
「春はあんま甘いの好きじゃねーからみぞれ。薄めたシロップみてーなやつだよ」
「……ふうん」
春一は関心のなさそうな返事をしたが、そのまま大きな口を開けてガブリガブリと氷を食べていく。
あっという間にカップの上に盛り上がっていたかき氷が無くなってしまった。
「気に入ったみてーだな」
夏樹は嬉しそうに言うと、やっと自分の半分溶けたかき氷にスプーンを突っ込む。
まだ春一の好みについては、鈴音より夏樹の方が詳しい。
ずっと一緒に暮らしてきた兄弟だから当然とはいえ、鈴音にとっては、とんだところにライバルがいたものだ。
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