最終章

28/42
前へ
/343ページ
次へ
「さて、と。どうしました?」 篠田さんが優しく聞いてきた。 「え?」 彼はそのまま微笑む。 この攻撃には耐えられなかった。 「えっと……」 それでも言い淀んだ。 「何か話があったんですよね?」 もちろん、見抜かれている。 「はい」 私は力なくそう言ったけど、軽くため息をついて覚悟を決めた。 「篠田さん」 「はい」 「私、自分を取り戻してから、その立場と、前にあなたの言ったことに戸惑っています」 「えっと、何でしょう?」 そこは鈍いのではなく、わざとなのだろう。 「私達は婚約者だったということと、『美緒』を好きだと言ったことです」 「ああ、そのことですか」 「そのことですか、って……」 篠田さんのあまりにも軽い言い方に戸惑った。
/343ページ

最初のコメントを投稿しよう!

465人が本棚に入れています
本棚に追加