第3章

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「そうか……その事故でお姉さんと記憶が……」 勉さんは、悟に話した時と同じような表情だった。 「はい」 「それは大変だったな……」 帽子を脱ぐと白髪混じりで坊主頭の彼は、頭をかきながら悟と私を交互に見た。 「それで、まだ何も思い出してないのか?」 「勉さん」 悟が少し注意するように言った。 「あ、すまんすまん。そういうのは焦っちゃいかんな」 彼はさらに頭をかいていた。 「勉さん、それも」 「ああ!ああ……」 彼は苦笑しながら頭をかくのをやめた。 なんとなく、勉さんがどういう人かわかった。 「まあ、そういう事情なのに……、また会えて良かったな」 勉さんが優しい表情で悟に言った。 「ああ……」 彼はそれだけ言葉にすると、そのことを実感しているように頷いた。 私は、口元に、笑みを浮かべた。
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