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少し、勉さんを交えて話していたけど、悟が時計を見た。
「美緒、時間は?」
「あ、うん。帰らなくちゃ」
私はそれに乗った。
「おお、そうか。そうだな、帰るところを引き留めてしまったな。すまん」
勉さんがそう言って頭をかきかけたけど、自分で気が付いてやめた。
「ううん、気にしないで。会えて良かったです」
私は笑顔で言った。
「そうか……」
勉さんも微笑んだ。
「じゃあ、……また、これからもよろしくな」
彼は少し間を置いて「また」を言った。
「……はい。こちらこそ」
私は戸惑いを隠すように微笑んだ。
勉さんは、悟のことを心から心配してるのだろう。
私は店の前で二人に見送られて坂を下り始めた。
あの事故のことを話した人が、また一人増えた。
あと、どれだけ増えるのだろう……
私はなるべく増やしたくはなかった。
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