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気持ちを込めて、春一は鈴音にキスをする。
なんたってわずか二回目のキスだから、驚かさないように怖がらせないように、小鳥のクチバシとキスするみたいに、そっと唇だけで触れる。
久しぶりで緊張してるのか、鈴音は体も顔も固くして、ギュッと目を閉じたままだ。
まあしょうがない。
最初の一回は事故みたいなものだったし、その次がもう、今のようにベッドの上。
ちゃんとキスしたこともないのに、いきなりベッドでは、そりゃあ固くもなるだろう。
だから春一は、そのまま鈴音がこっちに気づいてくれるのをしばらく待っていた。
すると動きが止まった春一を不思議に思ったのか、鈴音はゆるゆると瞳をあける。
すぐ目の前に春一を見つけて、びっくり眼の顔になった。
春一は、右手は鈴音の腰の脇、左手は肘を曲げて鈴音の頭の上に置いて、自重を支えている。
ふたりの距離の近さに、改めて驚いたのだろう。
「……」
鈴音は、照れたように頬を染めて視線を逸らした。
可愛くて、つい春一の頬にも笑みが浮かぶ。
鈴音が横を向いてしまったせいで、赤く染まった鈴音の耳と首筋が春一を誘っているように見える。
柔らかそうなそこに、喰らいついてくれと言わんばかりだ。
そんな衝動をぐっと耐えて、春一は右手を動かし、鈴音の顔の脇に寄せる。
多分鈴音は無意識だろうが、体の前で拳を握って、まるでボクシングのファイティングポーズだ。
その小さな拳も色を失って真っ白。
こんなに緊張している鈴音を、春一の自由にしていいわけがない。
第一、これじゃおもしろくない。
だから時間をかけて、ゆっくりと解いてやる。
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