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一瞬だけ見られてしまった、己の願望を露わにした瞳を忘れさせようと、春一は体を揺らして鈴音への責めを再開させる。
キスで塞いだ唇の奥で、鈴音がくぐもった呻き声をあげる。
それが甘やかな吐息に変わるよう、鈴音の感覚が一点に集中できるよう、春一は的確に狙って、鈴音の繊細な部分だけを責め上げる。
鈴音の呼吸が短く荒いものになったことを確認してから、キスから解放してやれば、開きっぱなしの唇から春一の腰を痺れさせる甘い声が飛び出してくる。
もう恥ずかしがっている余裕もなさそうだ。
ただ駆け上がっていく己の欲求にしたがって、春一にあわせて腰を振る。
「鈴音、愛してる」
声をかけたが、鈴音には聞こえていないかもしれない。
ただ春一だけを、春一しか感じられなくなっている。
――ずっと、こうしていたい。
鈴音の体のすべてに己の所有物の証をつけて、頭のすみまで春一のことしか考えられないようにして、鈴音の全部を俺のものにしたい。
本当なら、己の欲望のすべてを鈴音の中に注ぎ込みたい。
己の遺伝子を鈴音の中に植え付け、鈴音とその先に芽生えるだろう命を、この腕の中に抱いて、大切に大切に囲い込んでしまいたい。
でもそれは、まだ少し将来の話だからと、せめて今この瞬間の記憶だけでもと、春一は鈴音の体に己の痕跡を刻み込む。
刻み込む。
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