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ゆっくりと唇を離しても、鈴音はちゃんと笑っていた。
幸せそうな顔だ。
本来なら、この幸せな気分のまま、ここで鈴音を解放してやるのが、本当の紳士なのかもしれない。
でも残念ながら春一はそこまで出来た男ではない。
聖人君子じゃない。
せめて順番には従おうかと、今度は少しだけ強引なキスをする。
鈴音はベッドに頭をつけているので、これ以上は逃げることが出来ない。
だから春一は鈴音を捕えた。
最初は春一の頬に添えられていただけだった鈴音の手のひらに力が加わる。
少し引き剥がそうとするような力の入り具合だが、もちろん春一に従う気はない。
ただ壊さないよう傷つけたりはしないようにだけ気を付けて、深く深く鈴音を奪っていく。
歯の先から口腔の奥まで、丁寧にゆっくりと。
すると鈴音の手のひらから力が抜けて、撫で上げるように春一の頭に腕が回された。
固くなっていた唇も、ふっと緩まる。
唇が開いたのがわかった。
唇の隙間から漏れ聞こえる鈴音の呼吸が、まるで喘ぎのように聞こえる。
本当は苦しいのかもしれないけれど、そんな声がたまらない。
『……鈴音』
春一はもっともっとと鈴音を奪う。
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