クミちゃん と おねえさん と ワンちゃん

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「え?」 「え?」  異世界に飛ばされたクミちゃんは、深い森の中、一人の女性の前に突如まばゆい光に包まれ、現れた。 「キャ、キャアアアアアアア!!」 「なになになになに!?」  クミちゃんは戸惑いを隠さず目の前の小さな女性と周囲を囲む犬達を見渡した。 「うわぁ……全部おねえちゃんのワンちゃん?」  クミちゃんは、野太い声を女性に掛ける。女性は怯え、腰を抜かしながら答え、 「ち、ちちちちちがいます! なななななななんで裸!? ああぁああもうなんでもいいからた、助けて! 助けてください!」  クミちゃんに助けを求めた。クミちゃんは裸だったが、見たままに人間だったので女性は助けを求めた。  女性は手に鉈を持ち、背中には枯木の束を背負っていた。森に燃料用の薪を取りに来ていたと思われた、が当然クミちゃんには解らなかった。家電の王国から来た元幼女には木の束を背負う意味が解らない。 「え? どうしたの?」 「こ、このま、ま、まものを!」 「まもの? このワンちゃんの事?」 「わ、わんちゃんて、そんな優しいものじゃないです! 殺されてしまいます!」  それまで突如現れたクミちゃんに唸り声を上げつつ警戒を強めていた犬、否、一匹一匹が成人男性よりも大きい狼達、計八匹がクミちゃんと女性を囲む円を縮める。この数で、多少サイズが大きいとは言え人間二人を見逃す理由はこの狼には無かった。 「あ、ワンちゃん怖いの? かわいいのに……」  そう呟き、犬好きなクミちゃんはしゃがみ込み、手の平を上に片手で、群れの中で一番大きな狼の一匹に向かってチッチッチと口を鳴らした。 『ギャウッ!』  生物として格下に見られた・舐められた、と感じた一番大きな狼、群れのボスが先陣を切った。 「わぁっ!? ビックリした!!」  流石に犬好きのクミちゃんでも明らかな敵意を感じ手を引っ込め、向かい来るボス狼を反射的に全力の平手で突き飛ばす。 「キャア!」  突き飛ばされたボス狼が宙を飛んだ。
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