クミちゃん と おねえさん と ワンちゃん

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 飛んだ。  飛んだ。  更に飛んだ。  物理法則って美味しいの?という程に、飛んだ。  そして、そのボス狼の体は、成人男性の胴体程の幹を持つ樹木を三本へし折り、見るも無残な肉塊となった。  その光景をそこに居た命有る存在、狼達も女性もクミちゃんも、しばらく呆然と眺めていた。 「…………あぁ…………あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!」  そして、急にクミちゃんが立ち上がり、そのボスに向かって吼えた。  その咆哮にボスを瞬殺され残された狼達も総毛立ち、一匹残らず生命の危機に恐怖し失禁しながらも散り散りに走り去っていった。 「あ、あ、有難う御座います!」  女性は安堵した。裸で急に現れた巨躯の男性。しかし、狼のボスを一撃で倒し、一声で追い払った。何故裸なのかは解らないが、先ほどのやり取りからも悪意は一先ず感じられなかった。きっと、名のある冒険者なのだろう。そうだそうに違いない、と女性は考えた。 「ご、ごめ”ん”な”さ”い”ぃいいいいい! ワンちゃん、死んじゃだめぇええええ!!」 「…………」  しかし、助けられた事も含めどう贔屓目に見ようと努力しても、クミちゃんは不審者だった。
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