第22話

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「ねえ、シノ。ここへ戻ってくるとき、女長の部屋を見た?」 モエは文字をなぞる手を止めずに呟いた。 「うん」 シノも手を止めずに答えた。 障子の外から、虫の鳴き声が聞こえてくる。 「部屋の明かりが消えてたでしょう」 「うん」 「寝てるってことだよね」 「そう思う……」 「寝ずに代筆してるのは私たちなのに、上級女は女長が書いてると思ってるのよ」 「うん……」 大方そうであろうと、シノは思っていた。 おそらく女長は、誰が代筆したのかと訊ねられれば真実を答える。しかし訊ねられなければ、モエに代筆させたとわざわざ話さない。 「華蘭(からん)様が女長に銀子を渡していたところを見たのよ。代筆のお礼ですって。本当なら、その銀子は私とシノが貰うべきだと思わない?」 モエは静かな声に怒りを込めた。
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