恋に焦がれて鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす

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間違ってはいない。 仲倉の気持ちはタグに彫ったものと同じだと信じられる。 いつからだろう。 同族は雰囲気で気づくが仲倉がゲイだとは思わなかった。 女性にモテすぎていたせいか、 それともバイなのか。 大仰に椅子を引いた仲倉が派手な動作で膝の上に脚を乗せた。 骨ばっているが厚みのある足先は爪が綺麗に揃っている。 そういえば、 ゲイはやたらと爪を短く揃えたがるなと、 自分の指先を眺めた。 仲倉はさっきから前屈みでずっと皿をつついている。 理哉がジョッキを煽れば視線をあげてくる。 気づいているのか、 いないのか半信半疑の状態なんだろう。 仲倉をいつもじっと見ていた理哉の気持ちなど、 どうせとっくにバレているはずだ。 腹の探り合いに少しだけ笑えた。
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