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どのらい月日が経ったのかな?もうボクのつなぎめ部分やお腹が破れ、そこから綿が出ている。
気がつけば、ボクの居場所はもう暗い押入れの中。何年もゆみちゃんの姿をみていないなぁ。もうボクを忘れてしまったのかなぁ!ゆみちゃんに会いたいよ!
それからも押入れの中で、「ゆみちゃんに会いたい」とボクが思っていると、押入れの扉が開き、女の人が突然現れた。
誰だろうこの人?お母さんかな?
その女性はそっとボクを持ち上げて見つめる。
あれ?この温もり、ボクをみる瞳。ああ、君はゆみちゃんなんだね!大きくなったね!お母さんそっくりの美人さんになったね! キレイになったね!ボクはぬいぐるみだけど、ホロリとしてしまう。
ゆみちゃんはボクをそっと、そしてギュッと抱きしめてくれた! うれしいなうれしいな、またゆみちゃんに抱きしめてもらえる日がくるなんて、うれしいな。
その時、上から雫がぽたりと落ちてきた。なんだろう雨漏りかな?
ふっ、とゆみちゃんの顔見上げると、ゆみちゃんが涙を流している。
どうしたのゆみちゃん?泣かないで!
ボクはボロボロだけど、またお母さんの魔法で直してもらえるから大丈夫だよ!泣かないで! でも、またゆみちゃんに抱いてもらってうれしい よ!やっぱりボクは幸せものだよ。ボクも涙が出てくるような、そんな感覚を感じた!
哀しいな。仕方ないのかな?ボクは暗い段ボールの中!
微かにだけど、段ボールの向こうから聴こえる、回収をお願いするゆみちゃんの悲しく少し涙ぐんだ声!
ああ、そうだよね!ゆみちゃんはもう大人だもんね!この家ともお別れするんだね!
でもね、 最後にゆみちゃんに抱きしめてもらえて、とても幸せだったよ!ありがとう!
今までとても楽しかったよ!うれしかったよ!ゆみちゃん、これからも幸せにね!寂しいけど、ゆみちゃんの為だもの。
さようなら、ゆみちゃん!さようなら
終
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