第1章

6/10
前へ
/10ページ
次へ
そのまま、よしきは川の中に前のめりに倒れた。 そして、次の瞬間には、顔を上げて「うっわ~誰かが足を引っ張っている。離してくれー」と叫んでいた。 驚いた新一は後ろを振り返る。 誠二も、怖くなって新一の傍に行くと、腕をつかんでいる。 この時誠二と新一が見たのは、黒い影のようなものが、よしきの足を引っ張っている光景だった。 新一は、今朝おばあが言っていた無縁仏さんの言葉が、頭に浮かんでいた。 新一は、泣きながら、よしきの手を引っ張り始めた。 「よしきがんばれ」誠二は目の前の光景を見て恐怖で泣き出していた。 二人が格闘していてもだんだんとよしきの身体は、川の中に引きずり込まれていく。 恐怖に顔が歪むよしき、その時、声がした。 「おーい、子供らや、だいじょうぶか。」おばあの声だった。 その声がするのと同時に、川の中の黒い影が、光に吹き飛ばされたように見えた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加