第1章

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「ーーあなた起きて、あなた」  俺は冷たくなった風呂の中で目を冷ました。 「あれ、ここは家か?」 「当たり前でしょ」  目の前にいるのは「ぐにゃぐにゃ」ではなく嫁だ。俺は何をしていたのだろう。スーツのまんま浴槽に肩まで浸かっている。しかも鞄までそこに沈んでいた。頭がいたい。 「酔っぱらってたんでしょ、シャワーを浴びようとしたらいるから驚いたわ」  俺はゆっくりと浴槽から上がり、服を脱いだ。家内があきれ顔で洗濯機に俺の服を放り込む。肩も腰も相変わらずこったままだ。「ぐにゃぐにゃ」にはなってない。鞄ごと入るなんて、大分酔っていたようだ。俺は濡れた鞄を見つめてはっと気がついた。慌てて鞄をあけ、ファイルを取り出す。 「あああああ!」  「ぐにゃぐにゃ」にされたのは俺の肩でも腰でもない。会議で使う書類を見つめて、俺は背中に悪寒が走るのを感じていた。
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