2227人が本棚に入れています
本棚に追加
/315ページ
それから、王家は銀の守姫の存在を徹底して秘匿した。
もとよりセラフィールド国民にとって害をなすシールドではない。
国境のシールドを感知できるのも帝くらいだから、人々の記憶から銀の守姫の存在が風化するのも、そう時間はかからなかった。
その状態が続いて数百年。
他国や魔族も、シールドの存在自体は認識しているものの、誰が何処からシールドを張っているのかは分からなくなっているはずだ。
「・・・それが、数ヶ月前から異変が起きているの。」
ヒメが国境に張っているシールドは、接触する者を感知し、国境を通してよいか振り分ける機能を持っている。
それで感知される魔獣の数が、段違いに増えているのだ。
シールドに弾かれて国内には入って来られないため、国民はまだ気づいていない。
「私は、その理由を調べて、そして・・・」
もう限界だったのだろう、言葉の途中でヒメは寝てしまった。
ククルはヒメをヒョイと抱き上げ、ベッドへ寝かせる。
頭のウィッグをはずすと、そこから見事な銀が現れた。
「おやすみ、姫。」
本来ならば、魔獣増加の原因を調べるのは帝やギルドの仕事であって、ヒメの仕事ではない。
が、きっと彼女は誰かに頼るという発想がないのだろう。
「まあ、僕を喚んでくれただけでヨシとするか。」
ククルはフッと宙に消えた。
最初のコメントを投稿しよう!