第6話

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午後の授業はシリウスが教鞭(きょうべん)をとる歴史学だった。 「今日は、隣国アヒジャード教国との関係について、年代ごとに見ていく。」 アヒジャード教国は、その名の通りアヒジャードという神を崇拝する一神教の国だ。 アヒジャード教の教祖が代々、国王として権勢をふるっている。 「アヒジャード教国は、セラフィールド王国が建国される以前から教団として成立していた。 セラフィールド王国の前身である独立した村々は、今と同じく女神イシスを中心に多神崇拝していたから、アヒジャードとの軋轢(あつれき)は絶えなかった。 教団は、領土の拡大または村人をアヒジャード教に改宗させることを目的に、何度も攻めいってきた。」 これが、600年前までのこと。 「この後、国父セラフィールによってセラフィールド王国が建国された。 そして400年前、第5代セラフィールド国王はアヒジャード教国の侵攻を食い止めることに成功した。」 銀の守姫による『壁』の誕生である。 「はいはーい。」 男子生徒が手を挙げる。 「その、侵攻を止めた方法って何ですか?」 「一説には、セラフィールド王国の帝の体制が整ったためと言われている。」 実際には『壁』により魔獣がセラフィールド国内に侵入しなくなった分、近隣国内で魔獣が頻繁に出没するようになり、アヒジャード教国もセラフィールド王国ばかりに構っていられなくなったというのが真相だが、銀の守姫の存在を秘めるため、一般に帝の活躍によるものとされていた。
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