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自然と、マール対ヒメ、モブリ対キキの構図になった。
まず先陣を切ったのは、マールだった。
「『アース・アバランチ』!」
マールの詠唱により、地面がヒメへ向かってズドドドッと隆起する。
防御魔法で宙に浮くヒメ。
「ちっ、『ストーン・レイン』!」
次は石の礫(つぶて)が地面から宙に向かって雨あられと降りかかる。
そのすべてをシールドで防ぐ。
今のところ、ヒメには何のダメージもない。
だが、ヒメの顔はみるみる蒼白になっていた。
(ど、どうしよう。どうしよう・・・っ)
キキの予想通り、そもそもヒメには戦闘の経験がなかった。
どころか、誰かを傷つけたり、傷つけられたりすることもなく、これまでの人生を歩んできた。
そんなヒメにとって、初めて受ける「自身に向けられる害意」はショックが大きいもので。
心も身体も強ばって、身動きがとれない。
(どうしよう・・・っ。頭が働かない。
何か、考えないといけないのに・・・っ)
シールドならば無意識でも張ることができる。
これにより傷付くことはないだろうが、このままでは膠着状態だ。
「ちっ、埒(らち)があかないな、おい、マスティマ。」
使い魔を呼ぶマール。
応えがない。
「マスティマ?」
周囲に視線を向けると、蔦に絡めとられる使い魔の姿があった。
しかも大量に魔力を使い果たしたらしく、ぐったりとし、目を閉じている。
その横には、同じように蔦に絡めとられたキキがいた。
なんとか抜け出そうとしているが、鋼鉄のように頑強な蔦を前に苦戦しているようだ。
更には気絶して倒れているモブリ。
その奥で、戦闘しているククルと黒い精霊の姿が見えた。
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