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ヒメに向かって進もうとした水龍は何かにぶつかったようにピタリと動きを止め、
かと思うとクルンと1回転して、マールを飲み込んで水の球体になってしまった。
ヒメが水龍の前に壁状のシールドを展開したあと、シールドを球状に変形させ、マールごと包み込んだのである。
シールド自体は透明であるため、マールが水球の中に閉じ込められているようにしか見えない。
観客の殆どは、シールドの存在に気付いてもいないだろう。
マールも状況が把握できていないようで、水中で呆気に取られた顔をしている。
水球に近づくヒメ。
その右手には、サンダー・ボール。
ヒメの姿を見たマールは、水球の中で必死になって首を横に振っている。
「・・・ええと。」
ちらりとシリウスを窺(うかが)う。
ヒメの視線に気づいたシリウスが方眉をひょいと上げる。
「決闘に勝つ条件は、相手を気絶させるか、降参させるかだ。」
ま、水の中じゃ「降参」と言えないだろうがな。
「・・・そうですか。」
それなら、仕方がないわよね。
ヒメは、サンダー・ボールを水球に近づける。
水球の中には、先程の倍速で首を振るマール。首を振る度に、ゴボゴボッと口から空気が漏れている。
(・・・このままでも、呼吸困難で気絶しそうな気がするけれど。)
「えい。」
パリッと音がした後、水球の中には気絶したマールの姿があった。
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