第1章

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母はいつも言う。 「汚いから、 蛇口に口を着けちゃダメって、 何度言えばわかるの!」 でも、僕にとっては、この 『一滴もこぼすことなく飲みきる』 ことへの挑戦が今一番熱いことなのだ。 何日か経ったある日。 公園でいつものようにうきうきと蛇口を捻る僕に、 母はなにも言わなかった。 ごくごくごくごくっ 「ごふっ、ぐ、ぐぶっ…っ…」 僕の目には涙が溢れ、 両鼻からは、喉に押し込みきれなかった水がどぼどぼと流れ続けた。 (く、口が蛇口から離れない!?) そんな僕を冷たい目で見下ろす母の手には、 瞬間接着剤が握られていた。
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