第12話

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「あ、江茉さん。ここ。このお店なんですけど」 呼ばれた声に気がつき、飯山さんが指さしている携帯の画面を覗き込んだ。 「ここから近いんですよ。前に、佐藤くんが行ってすごく良かったって話してて」 見ると、食べ放題らしいが、ちょっとした高級感がウリのお店らしい。 「飯山さん。とめどなく食べそうですね」 「食べますよ!えっとね、確かそこの信号を」 大皿に綺麗に並べられた料理を私に見せながら、パッと顔を上げ、右前方を指さそうとする飯山さんの手が視界に入った。 「……」 中途半端に上げられた手と、続けられる筈の言葉がないことに気がつき、彼女の方に顔を向けた。 彼女の顔に表情はない。 「飯山さん?」 「江茉さん」 2人がお互いの名前を呼んだのはほぼ同時。 「……あれ」
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