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「次付き合う時はさ、元カノを超えたいと思うじゃん?」
「例えばどういうこと?」
「まぁ、例えばもちろん顔だよね?」
そう僕がいったとき、目の前にいる真美の表情がかすかに強張った。
相変わらず彼女は僕の話を聞いて笑っているけれども、間違いなく僕の人格を疑っているのだろう。
そりゃそうだ。
今僕は、恋愛は顔、しかも次に付き合う彼女は前の彼女と比べて決めていると発言をしてしまったのだから。
困ったように苦笑いを浮かべる真美の表情で、僕はまた口を滑らせてしまったことを悟った。
でも僕は間違っていない。
人間、肝心なのは中身だというが、そんなものは絶対に建前だ。
だれだってかわいい彼女がほしいに決まっている。
しかし場をわきまえるべきだったことは間違いない。
真美は、美人モデル級のスタイルを持っている女性ではない。
真面目で、僕の話を黙ってうなずきながら聞いてくれる女性ではあるのだが、ぽっちゃり体系なのだ。
顔も小顔ではないし、化粧もそれほど気合いを入れてしていない。
度が強い眼鏡をしているのか、目も小さく見える。
アルバイトの後に急いできたせいだからか、髪型がいつもと違うし少し乱れている。
それは僕が会いたいといったから、すこし無理をしてでもアルバイトの後に時間を作ってきてくれたのだ。
そこを責める権利は僕にはないし、普段はもう少しきれいに髪をまとめていることは知っている。
真美とはまだであったばかりである。
資格試験の勉強を進めるうえで、たまたま同じ学習グループのメンバーになっただけだ。
別に勉強なんかはどうでもよくて、ただ僕の話をまた聞いてもらいたかっただけだから時間を作って来てもらったのだが、どうにも満足な話ができない。
そして、恋愛は顔発言である。
そんなこと当たり前だと思っているとはいえ、さすがに失言であった。
でも本当のことを言ったまでである。
ここで謝ってはカッコ悪いではないか。
頭の中で、ミスターチルドレンが歌う「口がすべって」がリピート再生し始めていた。
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