パペット人形の憂鬱

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ポケットに入れてそれとなく気にしていた携帯がおもむろに振動する。 真美から返信が来たのかと思って取り出したのだが、メッセージの主は母親だ。 「なんだよ……」 内容は、おばあちゃんの家から野菜を分けてもらってきてという内容だった。 祖母は僕の家の近所で一人暮らしをしている。 もともと僕も一緒に住んでいたのだが、妹もいるし、部屋の数が少なくなったため新居に引っ越したのだ。 しかし家は近いので結構行ったり来たりすることが多い。 面相臭いと思いながらも祖母の家に足を運ぶ。 いつでもカギを開けっぱなしにしている祖母の家のドアは、チャイムを鳴らさなくても出入り自由だ。 僕を見るなり、嬉しそうに笑って祖母は出迎えてくれた。 「久しぶりだね、元気してたか?」 「久しぶりだって言ったって、先週あったばっかりだろ」 「そうだったかい?」 祖母が首をかしげる。 ぼけているわけではないと思うのだが、祖母の家に来ると毎回こんなやり取りがなされるのだ。 「それで、今日はどうした?」 「母ちゃんが、野菜を分けてもらって来いって」 「なんの?」 「トマト、青じそ、それからできたらキュウリだって」 「うん、あるよ。ちょっと待ってな」 よっこいしょ、と声をあげて、80歳を過ぎた祖母は台所へと足を運んで行った。 祖母を待つ間にテレビでも見ようと視線を向けると、戦争の特番をやっている。 そういえば明日は終戦記念日だったか。 記念特番に「火垂るの墓」は毎年おなじみの番組構成であることは、おそらく日本中の誰もが、少なくとも関東圏の人間には共通して当てはまるあるあるではなかろうか。 祖母が見ている番組を変えてしまうのも申し訳ないし、特段見たいものがあるわけでもないからチャンネルをそのままにしてなんとなく眺める。 特攻の話、戦争体験者の話が続々と流れてくる。 当時の映像を交えながら進んでいくドキュメンタリーを見ながら、僕の頭には小さな疑問がわいていた。
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