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当時アメリカは経済的にも政治的にも大きく発展を遂げていたはずだ。
そんな強国を相手にまともに戦って勝てると日本の連中は本気で思っていたのだろうか。
そこに野菜を抱えた祖母が戻ってくる。
「チャンネル、変えてもいいよ」
「いいよ、すぐ行くから」
僕はテレビに視線を注いだままそう答えた。
テレビは、戦局が悪化しているにも関わらず、国民の生活を制限して戦いを挑んでいく様子を描いている。
そして最終的に特攻の話になった。
飛行機が人間もろとも敵に突っ込んでいく自爆攻撃。
今でこそ中東で起こっている自爆テロなどを狂気じみていると日本の報道は報じているが、昔は日本だってやっていたことなのだ。
飛行機ごと突っ込んでいくなど、もはや作戦ではない。
追い詰められた日本がやけくそになって始めた死に物狂いの抵抗なのだろう。
「なんでこんなことになったかね?」
「何が?」
「戦争だよ。アメリカになんか勝てると誰も思っていないだろう?」
「あの当時はみんなが日本は負けるはずがないと思っていたんだよ」
そういわれて僕はずっと昔に習った歴史の授業を思い起こしていた。
小国日本がロシアの海軍を打ち負かしたとき、日本帝国は世界から一目置かれる存在になった。
そして次々と領土を拡大し、眠れる獅子と言われた中国までも支配しようとしていた時代の話である。
このままいけば、世界も征服できるのではないか。
テレビだって普及していない頃の話だ。
一般の人々がそう信じることだって容易だっただろう。
メディアの統制も現代よりずっととりやすいはずである。
あの戦争にあったのは、日本全体のエゴだ。
世界を征服すれば、小さな国だった日本でも他国を圧倒することで市場を独占することができる。
そんな風潮があったのかもしれない。
しかし戦局が悪化していることは、誰だってわかったはずだ。
「特攻なんて作戦が始まっても日本が降伏しなかったのはなんでだろうね」
祖母はあまり深く考えていないようだったが、そうだねぇ、と言って答えてくれた。
「あの当時、誰もが日本が負けるはずがないと思っていただろ?今更負けを認めるわけにはいかなくなったんじゃないかね?」
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