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朝靄の雫が、青々としげる葉を流れ落ちると、男の頬へぽたりと落ちた。
辺りは少しずつ白みかかると、一枚、また一枚と人の背丈もある大きな葉があらわとなった。
そんな大きな葉をまるで布団の様に覆い被せて眠る一人の男がいた。
その男は木の枝と枝を数本の丸太で繋ぎ、更には大きな葉で何重にも巻いたふかふかな寝床をこしらえると、そこに寝転び寝息をたてていた。
しかし一度でも寝返りでも打とうものならば、木の上から真っ逆さまに地面に叩き付けられるであろう高さ。
「んん…もうちょ…」
小鳥達がまるで男を歓迎するか様に男の側へとすり寄った。そして朝が来た事を喜んでいるかの様に耳元でさえずりをはじめる。
少しずつ朝靄が晴れて来ると、何百年にも渡って成長をとげた木々達が、あらわとなると、エルブス山の麓あたりまで続いている事が、ここが大きく古い森であることを教えてくれる。
「姉ちゃん…もうちょっと寝かせてって…むにゃむにゃ…」
小鳥たちが男の真っ黒で無造作な髪をした頭をついばむ。
エサと間違えたのか、はたまた巣の材料に調度良いと思ったのか、そんな小鳥たちのくちばしがいよいよ髪をむしりとっても男が起きる様子は無い。
そんな小鳥たちの横目を一匹の芋虫が横切れば、可愛らしく鳴いていた鳥たちも一瞬でハンターへと変貌をとげる。狙いを定め、鋭いくちばしで一掴みするとこれを喉へと押し込んだのである。
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