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「よかったー」
大きく息を吐いた上村が心底安堵したような表情になった。
「同業の女の子にまで嫌われたら俺もう、立ち直れなかった」
「同業って・・・・」
部活───大学ではサークルっていうのか───が同じという意味合いかなと思いながら真央は飾らない上村に親しみを覚えた。
「でも・・・私自慢じゃないけど、クラスの男子ともよくしゃべる方じゃないんです。だから・・」
「そんなの俺も同じ。ボートばっかりやってっからジャージ姿がほとんどだし、合コン行ってもほとんど人数合わせにいるようなもんだから」
「へぇ・・合コン。やっぱり大学生になるとそういう事あるんですね」
「そんなしょっちゅうでもないよ。女の子達の狙いはもっと上のレベルの大学の奴らだし、俺なんてほとんど引き立て役だよ」
「そうなんですか?」
真央は不思議そうな顔をして上村の顔を見上げた。高校生の自分から見たら横に並んで歩く上村はすごく大人に見える。カッコイイ方だと思うのに。
「女の子の査定をする目の厳しいことったら・・・」
おどけたように話す上村が何だか真央は可愛く見えてきた。
その後もとりとめない話をしているうちに、気がつけば真央の通う高校に着いた。
上村は自分の自転車を押しながら一緒に歩いてくれたのだった。
「もう着いちゃったのか・・・・早いな」
別れを惜しむような上村の言葉が嬉しくて、真央はポッと頬を染めた。
「あの・・ありがとうございました送ってくれて・・・遠回りだったのに」
「・・あのさ、またこんな風に部活の後会ってくれる? こっちは毎日潟に入るわけじゃないんだけどさ」
「私も・・・水に入るのは週3か4位です。夏休みに入ると増えると思うんだけど・・でも、いいんですか?」
今はまだ一学期の期末テストが終わったばかりで、大会に向けた練習は来週あたりから本格的になる。
「大会? ひょっとして県大会に出るの? 真央ちゃんが? シングルで?」
真央の問いかけが逆に上村から質問攻めに替わり、真央はただこくりと頷いた。
「すげーじゃん。え、俺見に行くよ。県大会ならいつもの練習場所でするんだよな」
興奮した様子の上村に真央はただ圧倒されて、はいと頷くばかりだった。
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