第1章

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夏の定番といえば何が思い浮かぶだろうか。 花火、祭り、海、スイカ… 沢山出てくる。 そんな中で、最もポピュラーでお金が掛からず、しかも涼しくなれるのは一体なんだろうか。 …分かるよね。 そう、肝試しだ。 仲のいい友人達と夜中の公園に集まれば、肝試しの始まり。 集まったのは5人。 2人と3人に別れて近くの神社まで歩くというだけの簡単な遊びだ。 まぁ、その時には順番に怪談を話していくんだけど。 ジャンケンでチームを決め、僕は2人組になった。 ペアは…あれ? 今日は仲のいい友達だけの集まりだ。 だから知らない奴なんている訳ないのに。 僕はそいつの名前が分からなかった。 「なんだ、遊矢は泉と組むのか」 パニックになりそうな瞬間、聞こえた友人の声にハッとする。 遊矢、は僕の名前だ。 ということは、イズミ、が彼の名前なのだろう。 「遊矢君ヨロシクね」 名前が分かった事と、やっぱりイズミの事が分からなくて頭がテンパっている僕は、イズミの言葉に返事をしなかった。 …そのことに気付いたのは、3人組の方が出発して少し経ってからだった。 『わっ、ゴメン!!』 「ううん。いこうか」 道中、先に話したのは僕だ。 なんの変哲も無い話し。 昔、近所で子供が溺れ死んだだけの話。 聞き終わったイズミは、話し出す。 場所は終盤。 河原に差しかかるところだ。 「俺はね、トモダチが欲しいんだ」 言って、突き飛ばされた。 幸い、よろけるだけで下に落ちる事は無かったけれど、怖くなった僕は後ろを振り返ることなく全力で神社まで走った。 神社に着けば、そこにいたのは4人の友人。 後ろにいたハズのイズミも居る。 『えっ!!?どういうこと!?!』 聞けばイズミは昔、溺れ死んだ子で。 友達と一度も遊べずに死んだのが心残りで成仏出来なかったらしい。 大事なのはそんな事じゃないけど!! 「ハハあと少しで遊矢君をあっちに連れていけたのにな」 あれから、イズミの姿は見ていない。 もしかしたら成仏してないかも知れないけど、あの夜がトラウマになった僕は絶対に河原に近寄ることは無かった。
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