第三章 本当と偽り

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到着が少し遅れていた誠治はやや急ぎ足で現場へと向かっていた。 現場はどこかと探すまでもなく、人だかりができているところが現場だ。 いつもテレビカメラが回っているところは基本的に人が集まる。 誠治はその光景が子役の時から変わっていないと回想する。 人だかりを見つけて近づき、スタッフ席となる場所はどこかと探す。 「あ、姫神」 スタッフ席に何故か当たり前のようにいる栞里を見つけた。 当たり前のようにいるだけでなく違和感がまるでない。 いつ撮影が始まっても出ていける、そんな雰囲気しか感じられない。 「オーラが完全に芸能人なんだよな」 学校でも完全に存在感が頭一つ飛びぬけている。 そしてそれに成績と能力が一切見劣りしていない。 「限りなく一般人から遠い一般人だな」 野次馬に混ざってみて初めて分かる。 「・・・ん?  あいつは・・・」 スタッフ席にいた栞里に近づく小太りのスーツのおじさん。 その顔に誠治は見覚えがあった。 「まずい・・・」 誠治は急いでスタッフ席に行こうとする。 しかし、その足は栞里のとった行動に驚いて硬直してしまう。 その光景は周囲の人だかりも騒然と、そして静まり返らせる。
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